新しいクラウドファンディングのかたちータイムバンク

 事業にお金が必要な人とそれを支援したい人を結びつけるクラウドファンディングについて考えていきたい。クラウドファンディングの定義を確認すると、ークラウドファンディング(英語: Crowdfunding)とは、不特定多数の人が通常インターネット経由で他の人々や組織に財源の提供や協力などを行うことを指す、群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語である。 ソーシャルファンディングとも呼ばれる。ーとある。ようするに、ネット上で資金調達をすること全般を指す。しかし、お金が必要な企業や個人は社会的な信用がないので自身でクラウドファンディングを行うことは難しい。そこでクラウドファンディングを専門に行うサービスが必要となる。

 ひとくちにクラウドファンディングといっても様々な形態が存在する。大きく分けて3つの形態(寄付型、購入型、金融型)がある。寄付型は出資者が企業に対し無償でお金を寄付する形態である。このとき出資者は企業から一切の対価を受けとらない。つまり、完全な支援者である。寄付型の有名な例として猫の保護団体最大手ネコリパブリックの猫島計画がある。(飼い主のいない猫の殺処分など社会的な問題となっている。)こういった猫などの熱烈なファンがいるといった条件で成功しやすい。購入型は出資者が企業にお金を出しそれに対して商品などを対価として得る形態である。出資者は市場に出回っていないモノを手に入れることができるといったメリットがある。一方で、企業は出資額によって需要をある程度予測でき、そのうえで商品を作ることができるというメリットがある。さいごに、金融型は出資者が企業にお金を出しそれに対して証券を対価として得るという形態である。

 

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 今回は金融型のクラウドファンディングサービスについて掘り下げていきたい。金融型のクラウドファンディングはこれまで銀行や株式市場が担いきれなかった資金調達に対してその裾野を広げるものである。まず新しいサービスのビジネスモデルを理解する前に、既存の銀行や株式市場のしくみについてふれたい。銀行の大きな業務として銀行が出資者となり、企業や個人に対しての融資をするというのがある。このビジネスモデルは出資者である銀行は企業や個人にお金を出し、それに対する対価に銀行が利子としてお金を受け取るというものである。ここで重要なことは銀行側は単に企業や個人にお金を貸しているだけでなく、お金が返ってこない可能性つまり貸し倒れリスクを負っているというこどだ。貸し倒れリスクは企業や個人が破産し債務不履行になることで起こる。そもそもお金が足りていない個人や企業がお金を借りに来るので、この貸し倒れリスクはかなり高いだろう。銀行側はいくらお金を貸すことで利子を得ているとはいえ頻繁に借りたお金を返せない企業や個人が出てくれば融資事業は立ち行かなくなる。そこで銀行はこの貸し倒れリスクを減らすために個人や企業を選り好みしたり、銀行自体が合併したり規模を拡大することでリスクを分散している。銀行はさまざまな基準をもうけ、企業や個人の財務状況を判断し融資をするかどうか、いくらまでするのか決める。つまり、銀行の融資は個人や企業がお金を返せるのかどうかという信頼関係のうえで成り立っていると言える。逆に言えば個人や企業は銀行から見た社会的な信用が必要になるということだ。

 金融型のクラウドファンディングサービスにおいてはどのように貸し倒れリスクを減らすのか、個人や企業の社会的な信用を判断するのかがひとつのテーマだろう。銀行のケースとは違い、サービス運営を行う会社自身が出資を行うことはないが企業や個人、サービスのルール自体でサービスの質に影響してくる。この観点から現行のクラウドファンディングサービスを見てみよう。タイムバンクやVALUといったサービスは個人の社会的な信用をTwitterなどのSNS上のフォロワー数などから判断し独自の影響力スコアを設けている。下記のURLで診断できる。

影響力スコア診断|Timebank(タイムバンク)

個人のSNSのデータから社会的な信用を判断しているため、このふたつのサービスは通常のクラウドファンディングとは違って、具体的なプランや行動に対する出資ではなく個人への出資というかたちをとっている。一方で、出資者に制限はなくだれでもアカウントをつくることができる。多くの人が出資することでリスク分散が可能になっている。また、起業家と投資家を結びつけるサービスとしてStartupListがある。このサービスは起業家と投資家を双方が探し出せるといういわばマッチングサービスである。Webの強みを活かし、起業家と投資家ともに多くの機会を得ることができる一方で、サービスを行うプロスター株式会社は起業家である個人や企業、投資家も選り好みを行い、一定の信頼性の維持を行っている。融資自体は起業家と投資家本人に委ねられるため、そのため貸し倒れリスク自体は完全に投資家に任せられている。このように各社サービスに工夫をこらしている。